【火垂るの墓】放送禁止はなぜ?該当する怖いシーンや最後に放送されたのはいつか解説

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高畑勲監督の代表作にしてジブリ映画の異色作と言える「火垂るの墓」にまつわる噂について解説していきます。

かつてはコンスタントにテレビ放送されていた「火垂るの墓」が、近年放送されていないことにお気づきでしょうか?

放送の機会が減ったことにより、放送局側で放送禁止の処置がされたのではないか?という噂が流れるようにもなりました。

しかし、これは根拠のない噂でしかありません。

こちらの記事では、なぜ「火垂るの墓」の放送の頻度が減ったのか放送禁止と思ってしまうくらいに過激な描写があったのかを振り返っていきます。

この記事には映画のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

目次

結論!【火垂るの墓】は放送禁止になったわけではない

火垂るの墓 スタジオジブリ公式サイト
© 野坂昭如/新潮社, 1988

「火垂るの墓」が、近年テレビ放送される機会が減ったことにより、放送禁止になったという噂が流れています。

しかし、これは全く根拠がない噂で、明確な情報はどこにもありません

放送される機会が減ったことに加え、題材がセンシティブなものなので、根も葉もない噂が広まったのだと思います。

【火垂るの墓】放送禁止はなぜ?考えられる5つの理由

「火垂るの墓」が、テレビで放送されなくなった理由を5つピックアップしました。

現実的な理由や、少し規模が大きい理由まで諸々紹介しております。

※↑リンクをクリックで知りたい項目へ飛べます。

①ズバリ!視聴率が取れない

「火垂るの墓」は1989年の8月11日に初めて「金曜ロードショー」で放送されて以降、13回放送されています。

90年代は比較的コンスタントに終戦記念日に合わせて放送されており、高畑監督の新作公開を記念したタイミングや追悼として放送されたこともありました。

テレビの影響力が高かった2000年代中盤までは視聴率は二桁を記録していましたが、2007年以降は一桁まで下降しており、2018年にはこれまでで最低の視聴率を記録しています。

単純に、視聴率の低下によって放送局側もタイミングを逃しているのかもしれません。

放送日視聴率
1989年8月11日20.9%
1990年8月17日10.7%
1993年8月13日14.5%
1997年8月8日19.1%
1999年8月6日18.8%
2001年8月10日21.5%
2003年8月22日15.1%
2005年8月5日13.2%
2007年9月21日7.7%
2009年8月14日9.4%
2013年11月22日9.5%
2015年8月14日9.4%
2018年4月13日6.7%

②ジブリ映画の中で一番人気がない…

「火垂るの墓」は戦時下に生きる兄妹を描いた作品で、娯楽作ではありません

公開当時の興行収入11.7億円は全く悪くない数字ですが、国民的なアニメーションスタジオに成長していくジブリの基準で考えると、比較的小規模なヒットと言えると思います。

視聴率の観点でいくと、「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」など、大ヒットした作品を放送していく方がいいのは間違いないでしょう。

戦時下の静かで残酷な暮らしを淡々と描いていくため、何度も観たいと思う作風ではないのも間違いありません。

作品のクオリティとしては誰もが認めつつも、暗い作風から「火垂るの墓」を、ジブリで一番好きだと挙げる方は少ないのが実情です。

③子供にトラウマを与える可能性があるから

「火垂るの墓」は戦時下を描いた作品なので、通常の映画よりも刺激的な描写は多くなります。

お茶の間で鑑賞するには刺激が強く、不意に見てしまった子供に何らかの影響を与える可能性もありそうです。

戦時下の背景を知ること良いことのように思えますが、「火垂るの墓」の放送を過度に慎重になっているのかもしれません。

④まさか!ドロップの商標問題が原因?

「火垂るの墓」では戦時下のため貧しい食生活が描かれており、その中でも節子が持っていたドロップは印象的に登場します。

しかし、ドロップの商標問題が放送への足枷になっているという噂があるそうです。

劇中で登場するドロップは佐久間製菓という会社が製造していたものですが、戦時中に材料不足に陥り閉業した背景があります。

終戦後は経営者である佐久間兄弟が別々の会社を立ち上げ、「サクマ式ドロップ」と「サクマドロップス」という商品を作りました。

似たような商品が別々の会社で製造されたことで商標の権利が複雑化し、問題が解決するまで「火垂るの墓」の放送ができなくなったというものだそうです。

しかし、商標の件は裁判を経て両者和解という形で解決しているため、商標争いと「火垂るの墓」の放送の関連性はほぼないと見ていいでしょう。

ドロップの件は一部では都市伝説として噂されていますが、「火垂るの墓」には他にもたくさんの都市伝説や噂があるので、気になる方はこちらの記事も併せて読んでみてください。

⑤反戦思想が強まるから…?

「火垂るの墓」をテレビで放送することにより反戦思想が広まり、安保法案を通した政府にとって都合が悪いのではないという考察もあります。

しかし戦争から80年が経とうとしている現在でも、反戦を掲げたメッセージ性の映画は至るところで製作されているため、陰謀論に近い考察だと思います。

悲しい話ですが、前回放送されたときの視聴率からすると、「火垂るの墓」にそこまで大きな影響力はないのが現実です。

政府を敵に回すから「火垂るの墓」は、テレビで放送されなくなったというのは、さすがに現実味は薄いと言えるでしょう。

【火垂るの墓】放送禁止の該当シーンがある?怖いシーンは

「火垂るの墓」で、放送禁止にされてもおかしくないと判断されそうな怖いシーンをピックアップしました。

比較的刺激が強いシーンの解説になるため、耐性に自信がない方はお気を付けください。

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清太の死

「火垂るの墓」の冒頭は、主人公である清太が餓死するシーンから始まります。

戦時下において食糧難に苦しむ人は多く、三宮駅に動かなくなった人間の体が並んでいるのは、生々しい残酷さを感じるシーンです。

直接的なグロテスク描写というわけではありませんが、オープニングから死体が並んでいると、耐性がない子供に対してかなり衝撃を与えるのではないでしょうか。

当時の状況を真っ向から描いたシーンとして印象的ですが、何度も観返したくなるシーンではないのは、間違いありません。

盗みがバレて殴打される清太

引き取ってもらった家族と馴染めずにいた清太と節子は、2人きりで生活するようになります。

しかし、当初は楽しかった生活も食料が尽きてくると苦しさが上回るようになり、清太は畑の食料を盗んでしまいました

やがて盗みが見つかった清太は、顔面がアザだらけになるほど殴られてしまい、節子のもとへ帰ったときに大泣きしてしまいます。

気丈に振る舞っていた清太が初めて涙を流しており、とても印象に残るシーンです。

そこまでグロテスクなわけではないですが、「火垂るの墓」は、戦時下に生きた兄妹をリアルに描いた結果、精神的に負荷がかかるシーンが多いと思いました。

やせ細った節子

苦しい生活が続いた結果、節子が病気にかかってしまい、みるみるやせ細ってしまいます。

天真爛漫で、明るい節子の元気がなくなってしまうところも辛いシーンです。

背中の汗疹と骨が浮き出た体は、「火垂るの墓」の中では、比較的グロテスクなシーンと言えると感じました。

明るい性格の節子が弱っているのも、余計に状況の残酷さが際立っています。

「火垂るの墓」は、題材的にグロテスクな映画という印象が残ってしまいそうですが、意外にも直接的に刺激が強いシーンは少ないです。

戦時下を大袈裟ではなく丁寧に描いたからこそ、観客に与えた衝撃が大きかったのだと思います。

【火垂るの墓】最後に放送されたのはいつ?

火垂るの墓 節子
© 野坂昭如/新潮社, 1988

「火垂るの墓」が地上波で放送されたのは、2018年の4月13日が最後になります。

高畑監督の追悼として放送されたものの、視聴率は6.7パーセントとテレビの影響力が弱まった現代とはいえ、決して高いとは言えない数字でした。

1989年から1991年までは、終戦記念日が近い8月に放送されており、それ以降は2年に一度のペースで放送されていました。

終戦記念日以外でいくと、高畑監督が遺作となる「かぐや姫の物語」の公開タイミングで、「火垂るの墓」が地上波で放送されたことがあります。

【火垂るの墓】2024年に地上波で放送される予定は?

放送禁止にされている根拠がないとなると、「火垂るの墓」の久しぶりの放送に期待してしまいます。

世界的には、NETFLIXでジブリ作品の配信が解禁されており、高畑監督の再評価の機運が高まっているところです。

しかし、従来の放送の周期から予想すると、2024年中の放送の望みは薄いと言えるでしょう。

今後、ジブリ作品の新作が公開されるタイミングや、来年の終戦記念日の周辺に久しぶりに放送される可能性はあるかもしれません。

【火垂るの墓】放送禁止はもったいない…戦争を繰り返さないために

  • 「火垂るの墓」が放送禁止されたのは根も葉もない噂
  • 低下している視聴率が放送されていない理由になっていそう
  • 重たい題材だが観客に突きつけるものが大きい名作

「火垂るの墓」が放送禁止にされているという噂について、考察してきました。

結局のところ放送禁止についてはただの噂でしかなく、たまたま放送の間隔が空いてしまった間に様々な憶測が生まれてしまっていたようです。

来年は終戦から80年を迎える年になり、宮崎駿監督のアカデミー賞の受賞や世界中に配信されたことによる再評価によって、「火垂るの墓」が再び注目を集めるかもしれません。

「火垂るの墓」は決して直接的な反戦のメッセージが打ち出された作品ではありませんが、一度鑑賞すると強く当時の現実を突きつけられる感覚になる映画だと思います。

戦争を風化させないためにも、久しぶりに「火垂るの墓」をテレビ放送してもいいのではないかと感じました。

「火垂るの墓」のあらすじ・結末や実話なのかを解説した記事もあるので、内容が気になったかたは併せてチェックしてください。

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この記事を書いた人

濱口竜介監督と対談することが夢です。映画やアニメを見始めて間もない頃に「寝ても覚めても」を映画館で観て人生が変わりました。それは、今まで鑑賞したどの映画とも似つかわしくない衝撃的な映画体験でした。以後、濱口監督の作品とご自身による作品の分析に毎度感心させられ、映画の得体の知れない深さに驚きます。濱口監督には遥か及びませんが、自分も映画やアニメの魅力を伝えられる存在になりたいです!

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