松村北斗さんの主演で実写映画化が決まった、「秒速5センチメートル」のあらすじについて紹介していきます。
「君の名は。」以前の新海誠監督の代表作とも言われており、今でも最高傑作と熱く支持するファンが多くいます。
青春の苦味が詰まった「秒速5センチメートル」のあらすじや魅力を解説していくので、ぜひご覧ください。
【秒速5センチメートル】どんな映画?簡単解説
新海誠監督が映画ファンに知られるきっかけになった作品で、小規模公開ながら興行収入1億円を記録しました。
上映時間が60分ほどの短い作品で、三編のオムニバス構成になっていますが、登場人物が重なっており三編通してひとつの物語になっています。
新海誠監督が小説的なスケッチのようにアイディアを練っていたところ、3本の軸が生まれ、オムニバスという形式に繋がったと語っています。
【秒速5センチメートル】あらすじを簡単/わかりやすく解説
「秒速5センチメートル」のあらすじを簡単に解説していきます。
三編のオムニバスですが、三編通してひとつの物語として完結するように構成されています。
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①桜花抄(おうかしょう)
クラスメイトの貴樹と明里は、思春期の男女でありながら気が合う関係で学校でも仲良く一緒にいました。
しかし明里が親の都合で栃木に転校したことで離れ離れになり、続いて貴樹も鹿児島へ引っ越すことになります。
文通をしていた2人は貴樹が鹿児島に引っ越す前に直接会う約束をしますが、当日の電車が大雪によって大幅に遅延してしまいました。
貴樹は直接渡そうと思っていた手紙は風に飛ばされるも、やっとの思いで待ち合わせ場所に到着し、1人で待っている明里を見つけます。
2人は大雪のもと抱きしめ合い、残り少ない時間を嚙み締めるように過ごしますが、明里も貴樹に準備していた手紙を渡すことができずにいるのでした。
②コスモナウト
高校三年生の花苗は、中学生のときに東京から引っ越してきた貴樹に恋心を寄せながらも、想いを伝えられずにいました。
花苗は卒業を控えたタイミングで悩みも多く、趣味のサーフィンも波に立てなくなり本調子ではありません。
少しずつ気持ちを整理していった花苗は、サーフィンの調子を取り戻したところで、貴樹に告白する決心をつけます。
しかし、貴樹の有無を言わせない雰囲気に圧倒されて、告白することはできませんでした。
花苗は、貴樹が自分ではない誰かを想い続けていることを悟り、失恋の痛みから涙を流し続けるのでした。
③秒速5センチメートル
社会人になった貴樹は東京で暮らしており、仕事に打ち込む日々を送っていました。
貴樹には3年間付き合っていた理紗という彼女がいましたが、心の距離が縮まらないことを理由に別れを切り出されてしまいます。
別れをきっかけに道に迷った貴樹は、仕事を辞めて明里のことを忘れられないでいることを、改めて実感します。
ある日桜が散っている中、小学生の頃の通学路を歩いていると、見覚えがある女性とすれ違います。
踏切越しにお互いが何かを察したような空気が流れると、2人の間を勢いよく電車が通っていきました。
しかし、電車が通り抜けると踏切の先にいた女性がいなくなり、貴樹は吹っ切れたように静かに歩き始めるのでした。
【秒速5センチメートル】結末/ラストシーンのネタバレ
中学生のときに離れ離れになった明里のことが忘れられないでいる貴樹は、仕事も恋も上手くいっていませんでした。
3年間付き合っていた彼女と別れ、仕事も辞めてしまい、人生の路頭に迷っています。
貴樹が記憶を再生させるかのように小学生の頃の通学路を歩いていると、明里を思わせる女性とすれ違いますが、見失ってしまうというラストでした。
いつまでも初恋が忘れられない男性の苦味と、人生の可能性がひとつ失われた瞬間が描かれている、とてつもなく切ない着地です。
ずっと会いたかった人に会えると思った瞬間の次のシーンを残酷と捉えるか新しい人生の始まりと捉えるかは、意見が分かれることでしょう。
個人的には、やっと貴樹が自分の人生を歩めるようになった前向きなラストだと捉えています。
【秒速5センチメートル】登場人物
「秒速5センチメートル」の登場人物について解説していきます。
青春特有の甘酸っぱい人間模様に胸が締め付けられるような、魅力的な人物造形です。
遠野貴樹(とおのたかき)/ 声:水橋研二
「桜花抄」と「秒速5センチメートル」の主人公で、三編通して最も需要な人物と言っていい存在です。
親の仕事の都合で転校を繰り返しており、どこかクールな雰囲気を漂わせています。
劇中でも貴樹の転校が物語のキーになっており、さまざまな人間模様が展開されていました。
声優は、「ゴジラ-1.0」や「大病院占拠」など、話題作に出演している水橋研二さんが務めました。
アニメーションの声優を担当したのは、「秒速5センチメートル」が唯一の作品ですが、貴樹の寄る辺ない感情を声の演技で絶妙に表現しています。
篠原明里(しのはらあかり)/ 声:近藤好美/尾上綾華
内向的な性格でクラスに馴染めずにいたところを、貴樹に守ってもらったことで好意を抱くようになります。
貴樹の初恋の相手となる存在で、幼い頃から両想いの関係でした。
しかし、親の仕事の都合で栃木に引っ越すことになってしまいます。
声優は小学生時代を近藤好美さん、大人になってからは尾上綾華さんが務めました。
年齢により声優を変更することで、明里の心情の変化が明確に伝わるようになっています。
澄田花苗(すみだかなえ)/ 声:花村怜美
「コスモナウト」の主人公で、種子島の小学校で転校してきた貴樹とクラスメイトになった少女です。
東京から転校してきた貴樹に他のクラスメイトとは違う雰囲気を感じ、恋心を抱いています。
部活帰りに貴樹と一緒に帰宅する仲でしたが、とうとう3年間告白することはできませんでした。
声優は、花村怜美が務めており、芯が強い花苗のキャラクターを見事に表現しています。
映画版、漫画版、小説版で、それぞれ異なる貴樹への想いが描かれており、実写化の際にどのように脚色がされるか注目です。
水野理紗(みずのりさ)/ 声:水野理紗
貴樹と3年間交際していた女性で、心の距離を縮めることがないまま、破局に至りました。
声優の水野理紗さんは、新海誠監督の作品には常連で、今作では同姓同名のキャラクターを演じています。
実写化では、水野理紗さんが演じるのか、他の俳優がキャスティングされるのか注目が集まります。
【秒速5センチメートル】映画のテーマは?何を伝えたかったのか考察
「秒速5センチメートル」は、親の仕事の都合で転校が多い貴樹を中心に、「人生のすれ違いやタイミング」がテーマになっていると思います。
「あのとき勇気を振り絞って告白しておけば…」と、学生時代の苦い後悔がある人ほど感情が掻きむしられることでしょう。
三編のオムニバス形式で物語が展開されていきますが、すべてのエピソードであと一歩の行動ができない人間が描かれています。
「桜花抄」と「コスモナウト」は、切ないラストを迎えますが、「秒速5センチメートル」では、どこか吹っ切れて爽快感すら感じる幕引きです。
過去に引きずられて目の前の人を見ることができてない貴樹が象徴するように、後悔しても仕方ないと背中を押してくれる映画だと思います。
切ない記憶があったとしても、人生を肯定してくれるようなラストに色んな感情が沸き上がりました。
【秒速5センチメートル】題名にはどういう意味がある?
「秒速5センチメートル」というタイトルには諸説ありますが、桜が木から散ったときに落ちていく速度だと言われています。
また、雪も同じくらいの速度で空から降ってくると言われているそうです。
「秒速5センチメートル」は、春と冬という対照的な季節が描かれています。
桜と雪は全く異なるモチーフですが、同じ思いを抱きながら遠くに離れている登場人物たちの関係に、どこか似たものを感じられるのではないでしょうか。
貴樹は明里と別れた冬の日のことを、忘れられないでいます。
過去を引きずっていて目の前の人と向き合えていない貴樹の人生のスピードを、タイトルで表現しているのかもしれません。
【秒速5センチメートル】モデルになった場所は?
「秒速5センチメートル」のモデルになった場所をまとめました。
- 東京都の参宮橋駅周辺
- 東京都の豪徳寺駅
- 栃木県の岩舟駅
- 鹿児島県の種子島
- 東京都の新宿副都心線周辺
背景の絵まで細かく描き込むことで知られる新海誠監督の作品は、新作が公開されるとロケ地を訪ねる、聖地巡礼を行うファンが現れます。
また新海誠監督の作品では電車が登場することが多く、「秒速5センチメートル」でも至るところで電車が使われていました。
【秒速5センチメートル】対象年齢は?
「秒速5センチメートル」の映倫の基準でいくと、誰でも鑑賞することができます。
ただ、過去の苦い青春を振り返る物語のため、学生生活を謳歌している最中には面白さを感じにくいかもしれません。
大人になればなるほど後悔している過去が増えたり、あり得たはずの未来を想像したりする機会が増えてくるはずです。
「秒速5センチメートル」は若いキャラクターが多いですが、人生経験が増えれば増えるほど苦味が染みてくる青春恋愛映画だと思います。
鑑賞したあとに誰かと人生経験を語り合ったり、誰に感情移入できたかを意見交換したりすることが楽しいタイプの映画です。
【秒速5センチメートル】ちょっと大人向けな青春ストーリー
- 「秒速5センチメートル」は、三編オムニバス形式の映画
- 青春期の後悔が描かれた苦い作品
- 人生の後悔が募った大人におすすめできる青春ラブストーリー
「秒速5センチメートル」は青春期の痛みや苦み、人生の後悔を描いた作品です。
過激な描写は全くありませんが恋愛が成就しないタイプのラブストーリーなため、学生よりも大人の感性を刺激する作品だと思います。
実写映画化決定しており、松村北斗さんが主演を務めることと2時間の長編映画にアレンジされることが発表されています。
2025年の実写映画版に備えて、今からサブスクで予習してみることをおすすめします。