戦争映画の名作として語り継がれている「火垂るの墓」は、作品にまつわる都市伝説が度々話題に上がります。
作品自体が第二次世界大戦下を描いており、暗い作風なため不穏な話題が上がりやすいのかもしれません。
今回は、そんな「火垂るの墓」にまつわる都市伝説について、有名なものからマイナーなものまで解説していきます。
【火垂るの墓】都市伝説まとめ:怖いものから実話まで11個の噂を紹介
「火垂るの墓」にまつわる都市伝説をピックアップしました。
それぞれ、真実味があるものからそうでないものまで幅広く紹介するので、ぜひご覧ください。
- ポスターの光は蛍ではない
- 放送されないシーンはあのドロップが関係?
- 声優が行方不明
- カニバリズム?清太は節子の骨を食べたのか
- 「火垂るの墓」には続きがある?
- 節子の病気は栄養失調だけではなかった?
- 「火垂るの墓」は実話説
- 清太と節子は地縛霊になった?
- ラストシーンで清太のカメラ目線が怖い
- なぜ「蛍」ではなく「火垂る」なのか
- 「火垂るの墓」は未完成のまま公開された
※↑リンクをクリックで知りたい項目へ飛べます。
①ポスターの光は蛍ではない
「火垂るの墓」のポスターは、清太と節子の周りを蛍のような光が彩っているという印象的なデザインです。
真っ黒な背景に、光の粒がたくさんあることと、「火垂るの墓」というタイトルから、光の粒は蛍のことだろうと連想するのが自然でしょう。
しかし、光の粒は実は蛍の光ではないという説があります。
暗い背景のポスター画像を明るく調整するとB29が浮かび上がり、焼夷弾が振りまかれているように見えるのです。
戦争が幼い2人の生活を蝕んだことを示すデザインに見えますが、奥に潜んだものとして提示しているところは作品のテーマと合致していると思いました。
ポスターについてはデザイナーやジブリから意図が語られていないので、憶測の域を出ませんが、「火垂るの墓」にまつわる説で最も有名なものとして知られています。
また、蛍が描かれていないポスターの背景にも戦闘機の画像が浮かび上がってくる仕様になっています。
目を凝らしてじっくりみてみましょう。
②放送されないシーンはあのドロップが関係?
「火垂るの墓」は、2018年を最後にテレビ放送から遠ざかっています。
長らく放送されていないことから放送禁止になったのでは?という噂も広まるようになりました。
しかし、放送禁止は飽くまで根も葉もない噂でしかありません。
また、噂が広まった原因の一つに、節子が持っていたドロップの発売元である会社の商標トラブルがありました。
「サクマ式ドロップス」の都市伝説については、他の記事で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。
③声優が行方不明
「火垂るの墓」は、主人公の妹である節子の健気な振る舞いも印象的です。
節子の声優を務めた白石綾乃さんは、なんと「火垂るの墓」が唯一の出演作だそうです。
しかし、そんな白石さんが現在行方不明になっているという都市伝説があります。
事務所の倒産によって引退したという噂もありますが、以前「火垂るの墓」のイベントを開催する際のゲストとして、白石さんにオファーをするも、音信不通だったそうです。
ただ、芸能界で華々しく活動を続けたわけではないので、一般人に戻ったとなると関係者が連絡先を知らないのは、仕方ないことのように思えます。
④カニバリズム?清太は節子の骨を食べたのか
清太は亡くなった節子の遺骨をドロップ缶に入れて持ち歩いていましたが、遺骨を食べていたのではないか?という都市伝説があります。
作中では、明確に遺骨を食べたかわかる描写はないため、飽くまで考察の域を出ないものです。
ただ、清太はかなり精神が衰弱していたため、ドロップ缶に遺骨を入れていたのを忘れていてドロップを食べようと思ったら、中身に気付くということはあったのではないでしょうか。
また、かつての日本では「骨嚙み」という死者を弔う儀式があったそうです。
現在の日本では「骨嚙み」は行われていませんが、清太が節子を弔うために、「骨嚙み」を行った可能性はあるかもしれません。
⑤「火垂るの墓」には続きがある?
「火垂るの墓」は、ラストに清太と節子が亡くなるため、映画としての続編はありません。
しかし、原作の小説の続編的な立ち位置の作品はあるそうです。
野坂昭如さんが発表した「アメリカひじき」という作品は、戦後22年の日本を舞台に、「清太が戦後を生き延びたら」というパラレルワールド的な世界観とも捉えれられます。
主人公が、アメリカ人の夫婦と話すことで、占領軍へのコンプレックスが刺激されていくという、重たい題材です。
⑥節子の病気は栄養失調だけではなかった?
節子は生活が困窮するにつれてどんどん衰弱していき、栄養失調によって亡くなってしまいます。
防空壕の中という不規則な生活によって節子の身体の免疫は低下しており、空襲後に降る黒い雨も、節子の身体を蝕んでいきました。
作中から、節子は目のかゆみや背中の湿疹、下痢に悩まされていたことがわかります。
これらの症状から、節子は疥癬(かいせん)の可能性が高いそうです。
また、節子の下痢については生活環境の悪さが影響した急性胃腸炎の症状ではないかという説もあります。
⑦「火垂るの墓」は実話説
「火垂るの墓」は実話ではないか?という説がありますが、こちらについてはほとんど事実と言えます。
というのも、「火垂るの墓」の原作自体が、野坂昭之の実体験をもとにした小説だからです。
原作については、他の記事で詳しく紹介しているので、ぜひそちらをご覧ください。
⑧清太と節子は地縛霊になった?
清田と節子は作中で亡くなってしまい、幽霊になって再び画面に現れます。
幽霊になった2人が再会するところは、切なくも感動的なシーンです。
しかし、2人は未だに成仏できていないのではないか?という説があります。
ラストで戦時下の神戸が舞台だったところから、急に現代の神戸に移り変わるという抽象的な表現がありました。
戦争の影響があって今の日本が作られたという戒めの表現だと思いますが、清太と節子は今の日本をじっと見つめています。
戦争によって不本意な死を遂げた2人のやり切れない人生を、地縛霊のような存在にすることで強調したのかもしれません。
⑨ラストシーンで清太のカメラ目線が怖い
「火垂るの墓」のラスト付近で、清太がじっとカメラ目線で何かを見つめるというシーンがあります。
幽霊になった清太がこちらを見つめているとなると、戦争に対するメッセージを感じるのが自然ではないでしょうか。
高畑勲監督が「火垂るの墓」は反戦映画ではなく、戦時下を生きた子供二人の物語と発言したことがありますが、戦争がなければ困窮した生活にはならなかったと思います。
戦争により清太と節子がどれほど無念の人生を送ったかを、ラストのカメラ目線から感じずにはいられません。
⑩なぜ「蛍」ではなく「火垂る」なのか
「火垂るの墓」のタイトルは「蛍」ではなく、火に垂れると書く当て字が使われています。
作品の終盤で象徴的に登場する蛍と、焼夷弾の光になぞらえたダブルミーニングなのではないでしょうか。
通常とは異なる文字使いとどこか意味深な字面が、一度見ると忘れられません。
⑪「火垂るの墓」は未完成のまま公開された
「火垂るの墓」が未完成のまま公開されたのは、都市伝説ではなく事実です。
高畑勲監督は、作品のクオリティ向上のために手を抜かない完璧主義として知られています。
加えて「火垂るの墓」は、60分の予定だった上映時間がどんどん伸びて80分以上の作品になりました。
彩色の作業が行き届いてなく、公開に間に合わないことを察した関係者の間で話し合いが始まります。
結果的に、演出の意図と捉えらる範疇で意図的に未完成のシーンを残し、劇場公開されました。
高畑監督としては苦渋の決断でしたが、色がなくなったような状態で清太が畑で盗みを行うシーンは、印象的なものになったと思います。
【火垂るの墓】千と千尋の神隠しの関係
ジブリ史上最もヒットした映画である「千と千尋の神隠し」に、節子が出ているのではないか?という説もあります。
千尋が銭婆に会いに行くために電車を乗るシーンがありますが、通り過ぎていく駅に、節子によく似たシルエットの少女が登場していました。
暗い影に覆われており判別はつきませんが、清太が駅で亡くなったことと少し関連性を見出してしまいます。
「千と千尋の神隠し」と「火垂るの墓」は、同じ世界線であるという設定が公にされているわけではありませんが、製作側の遊び心として似たようなキャラクターを登場させたのかもしれません。
【火垂るの墓】となりのトトロの関係
「火垂るの墓」と「となりのトトロ」は、1988年4月16日に公開されています。
「となりのトトロ」の企画が先行して進んでいましたが、60分ほどの中編規模だったため、単独での劇場公開は難しいと考えられていました。
そこで、高畑勲監督の新作と同時公開するという企画が発足して、並行して製作が進んでいったという経緯です。
しかし、最終的には2作とも80分以上の長編映画になり、それぞれが単独の作品として公開されることとなりました。
対照的な作風であることと、比較的暗い題材であることが影響して、当時の興行収入は5.9億円と伸び悩みましたが、評論家と観客からともに、高い評価を受けて現在まで語り継がれています。
【火垂るの墓】清太の死亡した日と死因は?
清太は、冒頭の「昭和20年9月21日、夜、僕は死んだ」というナレーション通り、昭和20年(1945年)9月21日に亡くなっています。
死因は明確には示されていませんが、状況的に栄養失調による餓死の可能性が高いでしょう。
また、節子を死なせてしまったという罪の意識から自殺をしたという説もあるようです。
しかし、かなり精神的にも身体的にもやつれている様子だったため、自殺をするほどの体力が残っていないようにも見えます。
いずれにしても、清太は戦争により不本意な死を遂げたことに変わりはありません。
【火垂るの墓】都市伝説は怖いものなどさまざま!本編もぜひ視聴を
- 「火垂るの墓」にはさまざまな都市伝説がある
- 「千と千尋の神隠し」に、節子を思わせる人物が登場する
- 「火垂るの墓」と「となりのトトロ」は同時期に製作され、同日公開された
本記事では、「火垂るの墓」にまつわる都市伝説を、紹介していきました。
事実であるものや信憑性が薄いものまでさまざまですが、考えを巡らせたくなるような強いメッセージ性がある作品なことは、間違いありません。
現在、「火垂るの墓」は、日本のサブスクで配信されていませんが、世界中で配信されたことで再び注目が集まっています。
ぜひ、この機会にDVDレンタルで鑑賞してみることを、おすすめします。