ジャンプ黄金時代と言われる1990年代を代表する人気漫画「るろうに剣心」。
原作漫画だけでなくTVアニメやOVAも非常に人気があり、2023年からは再アニメ化もしています。
そんな「るろうに剣心」ですが、原作漫画最終回のその後を描いた星霜編というOVAがファンの間で賛否が分かれる異色の作品となっています。
そこで本記事では、「るろうに剣心」星霜編が「ひどい」と言われてしまう理由や気になるあらすじを詳しく解説していきます。
【るろうに剣心】星霜編とは?

タイトル | るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-星霜編 |
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制作年 | 2001年12月19日(上巻) 2002年3月20日(下巻) |
監督 | 古橋一浩 |
脚本 | 吉田玲子 |
キャラクターデザイン | 松島晃 |
アニメーション制作 | スタジオディーン |
全話数 | 全2話 |
「るろうに剣心」星霜編は、原作漫画とTVアニメが完結した後に公開されたOVA作品です。
原作漫画の最終回より10年後が舞台となっていて、剣心たちのその後の人生を上巻と下巻の2話に分けて描いています。
脚本やキャラクターデザインをはじめとする制作スタッフの多くはTVアニメ版と異なる為、作品自体の雰囲気が全く違うのが特徴です。
声優は旧作TVアニメ版から引き継がれていますが、コミカルなシーンは一切なく終始シリアス展開となっている大人向けの作品となっています。
【るろうに剣心】星霜編がひどい!4つの理由を解説
原作漫画最終回のアフターストーリーである星霜編ですが、視聴したファンからは批判的な意見が多く挙がっています。
原作漫画とTVアニメは非常に人気があるのに、OVAの星霜編だけが酷評されているのにはなぜなのでしょうか。
まずは、星霜編がひどいと評価されている4つの理由について解説します。
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①結末が可哀想すぎて納得いかない
星霜編がひどい理由その1は、結末があまりにも可哀想すぎるからです。
本編で数々の死地を乗り越え、夫婦となった緋村剣心(ひむらけんしん)と神谷薫(かみやかおる)。
剣路(けんじ)という息子も生まれ、幸せな暮らしを手に入れます。
しかし、それから10年後を描いた星霜編では剣心がたった1人で贖罪の旅へ出かけていて薫と剣路は剣心の帰りをただ待つだけ。
さらに剣心が贖罪の旅で不治の病にかかり、旅から帰って来た剣心の看病をしていた薫もその病に感染してしまいます。
2人は病気が原因で衰弱していき、最終的には死亡するという結末を迎えるのです。
主人公とヒロインが共に病死するというなんとも悲しすぎる結末に、多くのファンが「納得がいかない」と批判的な意見を挙げています。
②全体的にシリアスすぎる展開
星霜編がひどい理由その2は、シリアスすぎる展開で終始陰鬱な雰囲気であるからです。
「るろうに剣心」は週刊少年ジャンプに連載されていた漫画作品で、旧作TVアニメも子供が見られる時間帯に放送されていました。
その為、シリアスな展開の中にもコミカルなシーンがあって場を和ませるような演出があったのですが、星霜編にそのような演出は一切ありません。
コメディ要素が全くなく、終始シリアスな展開で雰囲気が非常に暗い作品となっているのです。
特に、船上で人助けをしようとした剣心が荒れ狂う海に落ちて記憶喪失になったり、明るく勝気な性格だった薫が病気で次第に弱っていく姿に多くの視聴者が大きな衝撃を受けました。
原作漫画やTVアニメとの作風のギャップが「ひどい」と評価される最大の理由となっています。
③キャラデザが違いすぎる
星霜編がひどい理由その3は、キャラクターデザインがこれまでの作品と違い過ぎるからです。
TVアニメ版ではキャラクターデザインとキャラクター像が原作漫画の再現となっていました。
しかし、星霜編では本編から10年以上後が舞台となっていることからキャラクターデザインも実写に近い大人びた描写に変更。
さらに作中で10年という長い年月が経過していることから、ビジュアルだけでなく性格や考え方などキャラクター像にも大きな変化が見られます。
本作でキャラクターデザインを担当したのは、「マリア様がみてる」シリーズや「鬼滅の刃」のキャラクターデザインや作画監督として有名な松島晃(まつしまあきら)さんです。
アニメーションの制作会社もTVアニメ版66話までを手掛けていたスタジオぎゃろっぷから、スタジオディーンに変更になり制作スタッフにも大きな変更がありました。
全体的に線が細くシンプルに描かれていて原作漫画やTVアニメ版と印象が違い過ぎるので、作品の内容以前にキャラクターデザインの変化に戸惑うファンも大勢いるようです。
④和月伸宏先生が非公認の展開だから
星霜編がひどい理由その4は、原作者である和月伸宏先生非公認の作品であるからです。
星霜編は原作漫画最終回の10年後が舞台のストーリーですが、その内容は完全アニメオリジナルとなっています。
さらに、本作の制作にあたって「るろうに剣心」の原作者である和月伸宏先生は監修など一切関わっていません。
実際、完成した星霜編を視聴した和月伸宏先生は「見てかなり戸惑った」とコメントしていて、原作者の思い描いていた2人の未来とかけ離れたストーリーであったようです。
和月伸宏先生自身も原作漫画で薫を死亡させる構想はあったようですが、最後はハッピーエンドにしたかったという理由から薫を死なせない結末を選んでいます。
原作者が大団円を望んでいるのに対してOVAでバッドエンドのようなストーリーが展開されたので、「ひどい」と感じるファンが大勢いたのでしょう。

【るろうに剣心】星霜編はひどいのか?あらすじを紹介(ネタバレ注意)
剣心と薫の死という衝撃的な結末のせいで「ひどい」と評価を受けることが多い「るろうに剣心」星霜編。
終始陰鬱な雰囲気が漂う大人向けアニメですが、全体なストーリーはどのような内容なのでしょうか。
ここからは、星霜編のあらすじについてネタバレありで紹介していきます。
剣心、贖罪の旅へ
剣心と薫が結婚し、息子の剣路も生まれてしばらくは平穏な暮らしを続けていました。
ある日、陸軍から人助けの要請を受けた剣心は、その任務を引き受けて大陸をもまたぐ旅に出ることになります。
剣心は人斬り抜刀斎だった頃にしてきた自分の行いに対して、ずっと自責の念に駆られていました。
薫もそんな剣心の思いを尊重して旅に出ることに同意。
剣心は妻と子を残してたった1人で贖罪の旅へと出かけていくのでした。
剣心の帰国と梅毒への感染
剣心は贖罪の旅に一区切りをつけて薫のもとへ帰ってきます。
しかし剣心は旅の途中で病気に感染し、薫と再会を果たした時には既に発病して衰弱しはじめていました。
剣心が感染した病気は梅毒(ばいどく)。
本作の舞台である明治時代では梅毒は治療法が見つかっていない不治の病であった為、梅毒感染=死とされていました。
そんな体になってもまだ贖罪の旅へ赴こうとする剣心。
薫はそんな剣心を止めることができず、「遠く離れた地でも剣心と繋がっていたい」「同じ苦しみを味わいたい」という思いから自分も梅毒に感染させてほしいと懇願します。
こうして薫も梅毒に感染。
その後、剣心は衰弱する体を引きずって再び贖罪の旅へ出発します。
剣の腕を磨く剣路
剣心と薫の息子である剣路は、自分勝手に行動する父とそれを止めようとしない母に苛立ちを覚え家を飛び出します。
剣心の師である比古清十郎(ひこせいじゅうろう)の下へ向かい、そこで剣の修行に明け暮れようになりました。
時が経ち、梅毒が原因で薫は危篤状態となりますが、剣路は剣の修行を中断して母の下へ駆けつけようとはしません。
そんな剣路の前に現れたのは、剣心を師事して強くなった剣士・明神弥彦(みょうじんやひこ)。
弥彦は両親の考えや行動が理解できない剣路に真剣勝負を挑み説得します。
剣心と薫の死、剣路は強く生きる決意をする
薫が危篤状態になったという知らせは、贖罪の旅で中国大陸にいた剣心の下にも届いていました。
日本に帰国しようとする剣心でしたが、梅毒の発病と不慮の事故に遭ったことで記憶喪失に。
偶然中国大陸に渡っていた剣心の親友・相楽左之助(さがらさのすけ)の助けを借りてなんとか帰国を果たします。
その後剣心と薫は再会。
薫と会ったことで剣心も断片的に記憶を蘇らせますが、そのまま薫の腕の中で静かに息を引き取るのでした。
剣心の後を追うように薫もその後死亡。
両親の死を受けて剣路は強く生きる決意をし、恋人である来迎寺千鶴(らいこうじちづる)と「俺たちは幸せになろう」と誓い合うのでした。
【るろうに剣心】星霜編がひどい!剣心が梅毒になった理由は?
結論から言うと、剣心が梅毒になった理由は人助けが原因だとされています。
作中で剣心が梅毒に感染した経緯が判る描写がないので、はっきりとした理由は不明です。
剣心の死因となっている梅毒は、現代では性感染症と呼ばれることの多い病気で性交渉により感染することがほとんどですが、梅毒患者の感染部位が粘膜や皮膚に触れることでも感染します。
妻である薫を一途に想っている剣心が贖罪の旅先で浮気をする可能性は非常に低いと考えられるので、人助けの一環で梅毒感染者の感染部位に触れてしまい気付かぬうちに梅毒に感染してしまったと推測されています。

【るろうに剣心】星霜編がひどい?今作のテーマを考察
救いのないバッドエンドという印象が大きい「るろうに剣心」の星霜編。
本作で監督や脚本家が描きたかったテーマとは一体なんだったのでしょうか。
ここからは、星霜編のテーマについて考察していきます。
人斬りだった剣心の贖罪(しょくざい)
剣心は元々幕末最強と謳われていた長州派維新志士でした。
政府の依頼で暗殺を請け負って多くの人を斬殺してきた過去があり、本編でもその自分の行いを悔い改めるように不殺(ころさず)の誓いを立てて流浪人をしています。
本編ではそんな最中に薫や仲間たちと出会い、数々の困難に立ち向かう前向きな姿が描かれました。
剣心は薫と結婚して幸せを手に入れた後も、自分なりに過去の罪滅ぼしをしていきたいと考えていたのでしょう。
そこへ陸軍から人助けの要請が入ったことで、剣心は星霜編で贖罪の旅に出かけることを決意したと考察できます。
最愛の家族と別れ孤独な旅となりますが、旅の目的や思いは前向きなものとなっています。
剣心と薫の間にある深い絆
剣心は薫との出会いがきっかけで前向きに生きるようになっていて、2人は夫婦になる前から深い絆で結ばれていました。
本編でもお互いを良き理解者生として生涯にわたって支え合うことを誓い合っています。
星霜編では、剣心が旅の途中で記憶喪失になるも薫と再会したことで断片的に記憶を取り戻していく様子や、不治の病にかかり衰弱していく剣心の辛さを分かち合う為に薫が自らも感染することを決意する様子が描かれました。
このことから、剣心と薫の間にある深い絆こそが星霜編のメインテーマであり、監督と脚本家が描きたかった2人の関係性だと考察できます。
成熟した「るろうに剣心」を描いた大人向け別視点の作品
原作漫画やTVアニメ版では、激しい剣劇アクションやギャグを多めにして大人から子供まで面白く見られるような演出がされていました。
しかし、星霜編では剣心と薫の関係性や心の葛藤などをクローズアップして描いています。
その為、派手さはなく終始暗い人間ドラマが展開され、「るろうに剣心」の本編とは別視点の大人向けのアニメ作品として制作されました。
原作者である和月伸宏先生がアニメ制作に関わっていないことから、アニメスタッフによる二次創作的な作品となっているのです。
“あったかもしれないifストーリー”としてOVA化したと考察できるので、成熟した大人に向けて公開したアニメ作品と言えるでしょう。
【るろうに剣心】星霜編がひどい!作者は誰?
結論から言うと、星霜編の制作に和月伸宏先生は一切関わっていません。
星霜編は「るろうに剣心」の原作漫画最終回から10年後を描いた作品ですが、原作者である和月伸宏先生の監修を一切受けていないアニメオリジナルストーリーとなっています。
星霜編の脚本を担当したのは、女児向けアニメ「おジャ魔女どれみ」シリーズから感動大作として有名な「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の脚本を手掛けている吉田玲子(よしだれいこ)さん。
子供向けのギャグ作品を多く手掛ける一方で、大人が好む複雑な人間ドラマや恋愛描写のある作品も得意とするベテランの脚本家です。
また、監督の古橋一浩(ふるはしかずひろ)さんはアニメーター出身の演出家であり、「SPY×FAMILY」や「機動戦士ガンダムユニコーン」などのアニメ監督として有名な方です。
TVアニメ版からOVA作品である新京都編までの「るろうに剣心」シリーズ全てで監督を務めています。
アニメ版の「るろうに剣心」を知り尽くしている監督とベテラン脚本家のタッグによって生み出された星霜編は、非常に奥が深い考えさせられるストーリーとなりました。
【るろうに剣心】星霜編はひどいけどテーマもそれなりに深かった…
- 「るろうに剣心」星霜編は原作の十数年後(明治26年)が舞台。シリアス展開しかない完全大人向けの作品
- 剣心と薫が梅毒にかかって死亡するというバッドエンドであることから酷いと評価されがち
- 星霜編のテーマは剣心と薫の絆の深さと剣心の贖罪。テーマは複雑だが見応えも十分な作品
本記事では、「るろうに剣心」星霜編のあらすじや「ひどい」と酷評される理由について紹介しました。
本編は少年漫画らしくハッピーエンドで物語が完結した「るろうに剣心」ですが、星霜編では剣心と薫の死という悲しいストーリーが展開されています。
2人の死因が梅毒であることや作中で剣心が記憶喪失になってしまうシーンがあまりにも衝撃的であることから、ファンが大きなショックを受け「ひどい」と酷評される作品となってしまったようです。
しかし、本作は剣心と薫の絆の深さにスポットを当てた完全大人向けのアニメ作品。
2人の関係性をよく理解したうえで視聴すると、非常に深いテーマで描かれたストーリーであることが判ります。
「るろうに剣心」の新作アニメは多くの動画配信サービスで配信されていますが、旧作やOVA作品の配信はされていないので星霜編を視聴したい人はDVDを購入するかレンタルする必要があります。
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