この記事では「君の名は。」の国民的大ヒットの次作である、新海誠監督の「天気の子」についてまとめています。
監督自身が「賛否両論ある作品を狙った」と発しているくらい、大胆なラストは物議を醸していました。
「天気の子」のあらすじや、ラストの考察をわかりやすく紹介しているので、ぜひご覧ください。
【天気の子】あらすじを簡単に解説:どんな話?
「天気の子」は、離島から東京に状況した男子高校生の帆高と、必ず天気を晴れにする能力を持った女子高生の陽菜が出会い、世界の不条理に立ち向かっていくというストーリーです。
陽菜の祈りにより曇天から一気に晴れ渡っていく映像美が、圧巻のクオリティで多くの観客の感動を誘いました。
「君の名は。」に続いて音楽は、RADWIMPSが務めて、「愛にできることはまだあるかい」などの挿入歌が収録されたサントラも大ヒットを記録しています。
【天気の子】あらすじを結末まで”わかりやすく”解説
「天気の子」のあらすじを、起承転結にわかりやすくまとめて紹介します。
これから鑑賞する方は、内容を整理するためにこちらを参考にしてみてもいいかもしれません。
起:悩める若者・帆高
島での暮らしに嫌気がさした帆高は、フェリーに乗って東京へと向かっていました。
しかし、ほとんど計画を立てずに東京に来た帆高は、ネットカフェで過ごしますが、バイトも見つからずに所持金が減る一方でした。
仕事を見つけたい帆高は、たまたまフェリーで知り合ったライターの須賀のもとを訪ねます。
すると、須賀は姪の夏美とオカルト雑誌に記事を寄稿して、生計を立てていました。
猫の手も借りたい須賀は、帆高をすぐに社員として雇い、新しい生活が始まるのでした。
承:謎の晴れ女・陽菜
東京は異常気象により雨の日が長く続いていましたが、一時的に晴れにする能力を持った少女がいるという都市伝説のような噂が流れていました。
ある日、帆高は売春の勧誘を受ける少女を助けようとすると、以前マクドナルドで偶然出会った陽菜であることに気付きます。
さらに、陽菜こそが祈ることで晴れ間を取り戻す能力を持った「晴れ女」であると、知らされました。
陽菜は、弟の凪と2人で貧しい暮らしをしており、帆高は陽菜の能力を使って商売をしようと提案します。
3人は、「晴れ女」の能力を使ったサービスを展開し、利用者から好評を受けて、ささやかながら生活に豊かさを取り戻すのでした。
転:束の間の逃避行
「晴れ女」のサービスが軌道に乗り始めたところ、帆高の家族から捜索願いが出され、帆高が偶然拾った拳銃を発砲したことにより、帆高は警察から追われる身になります。
陽菜と凪も児童相談所に介入されることを恐れて、3人で逃げ出すことにしました。
大雨の夜、行く場所を失った3人はラブホテルで一夜を過ごしますが、「天気の巫女が、人柱になり世界の犠牲になる」という言い伝えの通り、陽菜の身体が透明化するという異変に見舞われます。
帆高は自分のせいで陽菜の身に危険が迫っていると察するも、何もすることができません。
そして、夜が明けると陽菜の身体は跡形もなく消えてしまい、東京に久しぶの晴れ間が差すのでした。
結:ぼくたちは大丈夫だ
警察の捜査がホテルに及び、帆高は捕らえられ、凪は児童相談所に保護されてしまいました。
諦めきれない2人は、脱走して陽菜が「晴れ女」の能力を手に入れたであろう廃墟へと向かいます。
帆高が、廃墟の屋上の鳥居をくぐると、雲の上のような異空間に突入して陽菜を救うことに成功します。
ところが、陽菜を人柱に差し出さなかった結果、東京は2年以上雨が止むことはありませんでした。
責任を感じていた帆高は、ある日1人で祈る陽菜と再会し、思わず駆け寄って抱き合います。
様々な鬱屈を抱えていた2人でしたが、「僕たちは大丈夫だ」と根拠なく、今後の明るい未来を確信するのでした。
【天気の子】あらすじ結末がバッドエンドだった?考察
物語の終盤に、陽菜を犠牲にして東京の異常気象を解決するか、陽菜と一緒にいることを選ぶかを迫られ、帆高は陽菜を救うことを決断しました。
帆高の選択のせいか東京は何年も雨が降り続けますが、帆高はある日、1人必死に祈る陽菜と再会。
自分たちは「大丈夫」だと確信するというラストでした。
端的に言えば、1人の人間を犠牲にして世界を救うか、世界を犠牲にして1人の人間を救うかを問いかけたラストと言えるでしょう。
個人的には、無鉄砲な若者特有の瑞々しさに満ち溢れた、強引でありながら、とてつもない力を感じる素晴らしいラストだったと思います。
【天気の子】あらすじ結末がバッドエンドだったと言われる理由
こちらでは、「天気の子」のラストがなぜバッドエンドと言われているかをまとめています。
極端な方向に振り切ったラストをいい話として受け入れることが難しかった方は、当時から多くいました。
ひとつひとつ要点を整理して紹介します。
①東京の三分の一が水没したから
人柱として犠牲になることを選ばなかった帆高と陽菜の選択によって、東京に2年半の間、雨が降り続けました。
大雨により東京の三分の一が水没してしまい、住み替えを余儀なくされた方も多くいるようでした。
単純に犠牲者の数がたくさんいることを考えると、バッドエンドと捉える人がいても仕方ないことだと思います。
明確に示されていませんが、大雨によって亡くなった方もいるかもしれません。
ただ、陽菜が犠牲になったからといって、本当に雨が止む保証はありません。
東京に住む人々も単なる異常気象としてしか捉えていないことから、2人の責任だと捉えている人はいませんでした。
②雨が降り続けることと陽菜のメンタル
雨が降り続ける中、1人で晴れを祈り続けている陽菜のメンタルを心配する声も多く聞かれます。
陽菜が人柱として犠牲にならなかったことが直接の原因かはっきりとわかりませんが、責任を感じている様子が伝わっていきます。
今までは自分の能力で東京の天候を保っていたため、自分のせいだと思ってしまうのも無理もありません。
2年半の間、陽菜と帆高は一度も会っていないため、苦悩を打ち明けられる人もほとんどいなかったのではないでしょうか。
陽菜と帆高が再会しても雨が止むかはわからないため、変わらない状況からバッドエンドと捉える方が多いのだと思います。
③「大丈夫だ」の意味
ラストに陽菜を見つけた帆高が、「大丈夫だ!」と大声を上げて駆け寄り抱き合うシーンが、感動的である反面、根拠のなさに困惑する方が多いのも事実です。
帆高の舞い上がりっぷりを見るに、何か明確な根拠を持って「大丈夫」と言っているわけではないと思います。
陽菜としては1人で祈り続けた時間を思うと、「大丈夫」と言ってくれる人がいるだけで、救われる気持ちになったことでしょう。
ただ、お互いを支えていけるほどの生計も立っておらず、客観的に「大丈夫」だと思える要素が少ないことから、ある種のバッドエンドと言えるのかもしれません。
ちなみに、新海誠監督は、当時のインタビューで「この二人はいずれ別れると思う」と発言していました。
【天気の子】あらすじ・ストーリーは何を伝えたかったのか考察
賛否両論別れた「天気の子」が一体何を伝えたかった映画なのか、考察をまとめてみました。
独自の見解も含むため、ひとつの意見として参考にしてください。
「天気の子」では若者だけの集団生活を軸に、ファストフードやカップラーメン、安いラブホテルなど、若者の貧しさが描かれていると感じました。
物語の序盤に帆高が拾う拳銃は、社会に対する怒りを隠喩的に表現しているのだろうと言われています。
帆高が劇中で追い詰められてとった行動はことごとく裏目に出てしまい、勢い任せの選択により大きな犠牲を払って、迷惑をかけてしまうというキャラクターでした。
帆高の選択はやがて世界を巻き込む事態に発展してしまいますが、「天気の子」は、帆高の存在を責めることはしません。
帆高は終盤に尋ねた兄貴分の須賀から、「お前のせいじゃない、自惚れるな」とはっきり言われていました。
ちなみに、須賀は、「歳をとると、大事なものの優先順位が変わってくる」と言っている通り、若い感性を失ってしまった大人として描かれています。
「天気の子」のラストは、かなり勢い任せのところがありますが、まだ若く失敗ができる若者を全面的に肯定するものだったと思いました。
余りにも極端な二者択一の物語ゆえに否定的に感じる観客もいましたが、人によってはとても強く胸を打たれる物語だと言えるでしょう。
【天気の子】あらすじと結末・テーマについて:まとめ
- 「天気の子」のラストがバッドエンドと言われている
- 帆高と陽菜の選択が賛否両論になっている
- 「天気の子」は若者の貧困を描いた作品と言われている
「天気の子」の賛否別れるラストを中心に考察をまとめてきました。
あらゆる意見を受け取り、改めて配信で観ることで自分なりの考察が出来上がると思います。
新海誠監督の作品は、「天気の子」以外にも配信中で、来年には「秒速5センチメートル」の実写化も発表されました。
この機会に、配信で新海誠監督作品を、ぜひ鑑賞してみてください