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【ネタバレ考察】「PERFECT DAYS」|小さな幸せが日々溢れている完璧さ|ラストシーンの魅力・感想

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PERFECT DAYS
(c)2023 MASTER MIND Ltd.

2023年12月22日(金)日本上映が開始され、第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に役所広司さんが輝いた作品、「PERFECT DAYS」。

「パリ、テキサス」(1984年)や「ベルリン・天使の詩」(1987年)などの作品を手がけたドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースが監督を務めました。

おおいずみ

セリフは最低限、何か大きな事件やアクシデントが起きるわけでもないのに、強く引き込まれる素晴らしい作品です。

主演の役所広司さんの洗練された演技力の高さはもちろんのこと、アメリカのミュージシャンとして人気を博したルー・リードの代表曲「Perfect Day」が劇中歌として使用されているところも、作品の雰囲気を儚く彩っています。

今回は、「PERFECT DAYS」のネタバレ考察となりますので、まだ観てない、これから鑑賞予定の方は、ご注意ください。

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目次

映画「PERFECT DAYS」作品情報

公開日2023年12月22日(金)
監督ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)
音楽・「House of the Rising Sun」The Animals
・「Pale Blue Eyes」The Velvet Underground
・「(Sittin’ On) the Dock of the Bay」Otis Redding
・「Redondo Beach」Patti Smith
・「(Walkin’ Thru The) Sleepy City」The Rolling Stones
・「青い魚」金延 幸子
・「Perfect Day」Lou Reed
・「Brown Eyed Girl」Van Morrison
・「Sunny Afternoon」The Kinks
・「Feeling Good」Nina Simone
上映時間2時間4分
配給ビターズ・エンド
受賞歴・カンヌ国際映画祭(2023年)- 主演男優賞(役所広司)
・アジア太平洋映画賞(2023年) – 作品賞 (Best Film)
・モントクレア映画祭(2023年)- 若手審査員賞 (Junior Jury Prize)
上映劇場映画「PERFECT DAYS」公式サイト|劇場情報
映画「PERFECT DAYS」作品情報
おおいずみ

それでは、映画「PERFECT DAYS」をネタバレありで考察していきます!

映画「PERFECT DAYS」あらすじ

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。

同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。

その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。

そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。

映画「PERFECT DAYS」公式サイトから引用

映画「PERFECT DAYS」キャスト

役名俳優役柄
平山役所広司公共トイレの清掃員
ホームレス田中泯代々木深町の公園に住み着いたホームレス
ニコ中野有紗平山の姪
タカシ柄本時生平山の同僚
アヤアオイヤマダガールズバーで働く女の子
ケイコ麻生祐未平山の妹でニコの母親
ママ石川さゆり浅草の居酒屋のママ
友山三浦友和ママの元夫
映画「PERFECT DAYS」キャスト

役所広司さんや柄本時生さん、三浦友和さんを始め、世界的ダンサーの田中泯さんなど、俳優やダンサー、歌手まで実力派のキャストが揃っています。

役所広司さん演じる平山

(c)2023 MASTER MIND Ltd.

平山は、東京スカイツリーが見える押上の古びたアパートで一人暮らしをしている寡黙な中年男性です。

渋谷エリアの公共トイレの清掃員として、自らの仕事に誇りを持って仕事をしています。

おおいずみ

日々、同じような生活の中でも、毎日違った小さな幸せを見つけられる感性の豊かさは平山の魅力!

仕事の昼休みにホッと息をついて空を見上げたとき、太陽が優しく降り注ぐ木漏れ日に向かって微笑みを浮かべたり、様々な人たちが行き交う街の一部を眺めて物思いに耽ったり、言葉数は少ないものの自分の世界を持っているような男性です。

趣味も決して少ないわけではなく、仕事で公共トイレ間を車で移動する際は、パティ・スミス、ルー・リード、キンクス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどひと昔前の音楽を古いカセットテープで聞いていたり、休日は行きつけの居酒屋があったりと静かながらも自分なりに楽しく生きていることが映像を通しても分かります。

平山はカメラもフィルムカメラ、音楽を聞くのもカセットテープを愛用しており、仕事で使用するガラケー以外は、デジタル機器を持っていません。

現代社会では、平山のようにデジタル機器と離れた生活を送ることは難しいでしょう。

おおいずみ

平山が浮世離れしているような印象も抱きましたが、同時に俗世のしがらみに囚われすぎない平山の生き方は美しく、羨ましさすら感じます。

平山の現在の生活からは想像もできなかったのですが、平山の実家は裕福であり、経営者である父親と衝突しなければ、清掃員ではなく違った人生だったかもしれません。

それでも、平山は今の生活に満足しており、豊かさだけが幸せではないことを平山を通して表現している映画です。

役所広司さんは、「PERFECT DAYS」で平山を演じるにあたって、実際にトイレの清掃員として働かれている方に「清掃中にトイレを利用する方が来たらどう対処をするのか」などの話を聞いたり、「綺麗になったトイレを見たときはどう思うのか」「トイレを利用する人が綺麗なトイレを見てどういう気持ちになってくれるか」などをじっくり考えることで、役作りを徹底的に行ったようです。

おおいずみ

公共トイレの清掃員として黙々と一心に作業している姿から、役所広司さんの清掃員に対して最大級のリスペクトを感じざるを得ません!

平山を取り巻く魅力的な人間達

(c)2023 MASTER MIND Ltd.

平山と関わっている登場人物も魅力的です。

平山の姪、ニコは初めはトイレの清掃員として働く平山の姿に驚きを隠せなかったものの、仕事を黙々とこなし、木漏れ日を見て微笑んで幸せを感じている平山を目の前にして、このような生き方も幸せで良いじゃないかと悟ります。

おおいずみ

清掃員のタカシと平山の絶妙な掛け合いも面白いので注目してほしいポイントです。

タカシは、平山が黙々と仕事をしていようがお構いなく「平山さんって結婚してないっすよね?!その年で1人で寂しくないですか?」と悪びれもなく聞いてしまうような、言葉を選ばずに言うと、無神経な人間です。

それでも平山は、そんなに彼のことを嫌いではなく、どこか憎めないなとさえ思っています。

また、踊り狂うホームレスも作品の雰囲気を盛り上げます。

おおいずみ

平山は自らと目が合うホームレスに敬意を表しているようでしたが、彼に自分の未来を見たのか、生き方を羨ましく思ったのか、平山の心の内は計り知れません。

「PERFECT DAYS」ネタバレ!ラストシーンの意味を考察

Nina Simone – Feeling Good (Official Video)

「PERFECT DAYS」のラストシーン、ニーナ・シモンの「Feeling Good」の音楽をバックに、車の中で平山が笑いながら泣いている姿にグッときて、劇場でもらい泣きした方も多いのではないでしょうか?

平山は何を思い、泣いて笑っていたのか、本当に様々な感情が入り交じっていたのだと思います。

裕福な妹に「本当にトイレの清掃員として働いているのか」と問いかけられ、生活格差の違いをありありと見せつけられてしまったことも、平山自身は気づいていないかもしれませんが、心にヒビが入った可能性はあります。

おおいずみ

それでも、幸せというものは、目の前にある公共トイレを綺麗に磨きあげること、つまり今の環境で一生懸命輝くことや、日々のルーティンの中で小さな発見を見つけ出すことだと、平山は分かっている気がします。

経済格差、父親への負い目、逃げてしまった自分自身の悔しさやもどかしさもあるだろうと思います。

しかしそれは過去の自分、ひいては今の自分を作り上げたものだから、決して否定はしたくない、今の生活も本当に幸せなんだ、とあらゆる感情が入り交じった結果があの泣き笑いなのかもしれません。

結局「PERFECT DAYS」とは何だったのか?

(c)2023 MASTER MIND Ltd.

平山の過ごす毎日は同じように見えるけど、毎日毎日少しずつ違って、そして平穏な毎日です。

小さな幸せが日々溢れている完璧さ、それこそが平山の思う「PERFECT DAYS」でしょう。

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まとめ:幸せの定義を考え直すキッカケになった

(c)2023 MASTER MIND Ltd.

映画「PERFECT DAYS」を鑑賞して、幸せの定義を考え直すキッカケになりました。

幸せとは何なのか、多くの富、地位や名誉も手に入れた人の方が幸福度が高いのかなと思っていましたが、決してそうではなく、むしろ幸せの定義をつけることすら間違っているのかもしれません。

おおいずみ

幸せの定義は、きっと人それぞれなんですよね。

スクリーンを通して平山の生き方を観察し、まさに「こんなふうに生きていけたなら」と思わせた、役所広司さんとヴィム・ヴェンダース監督、キャスト・スタッフ一同にたくさんの拍手を送りたいです。

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この記事を書いた人

ありとあらゆるジャンルの映画・ドラマをこよなく愛するライターが集まっているCineManiA編集部。
日々映画やドラマの考察や作品の魅力について語り合っています。

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