“抜け感”を持ち味とする山下敦弘監督と、心情表現が至極ドラマティックな原作漫画の相性ばつぐん!
主人公・浅井の、原作におけるモノローグ量を半分以下に減らし会話に置き換えた、挑戦的な映画表現にも注目です。
コメディ×サスペンス、その緩急を楽しむ映画「告白 コンフェッション」を紹介します!
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この記事には映画の結末や重要なネタバレを含む可能性があります。未鑑賞の方はご注意ください。
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公開日 | 2024/5/31 |
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監督 | 山下敦弘 |
原作 | かわぐちかいじ 福本伸行 |
脚本 | 幸修司 高田亮 |
キャスト | 生田斗真 ヤン・イクチュン 奈緒 ほか |
音楽 | 宅見将典 |
上映時間 | 1時間14分 |
配給 | ギャガ |
公式サイト | 「告白 コンフェッション」公式サイト |
上映劇場 | 「告白 コンフェッション」上映劇場 |
【告白 コンフェッション】のネタバレ!映画の結末までのあらすじ
それではまず、「告白 コンフェッション」映画の結末までのあらすじを、ネタバレありでご紹介します。
映画を未鑑賞の方はご注意ください。
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起:告白
大学時代、山岳部の仲間だった浅井啓介(生田斗真)とリュウ・ジヨン(ヤン・イクチュン)は15年以上もの間、慰霊登山をおこなっています。
山で亡くなったのは、おなじく山岳部の仲間だった西田さゆり(奈緒)。
いま、慣れ親しんだ山のなか、吹雪に阻まれ浅井とジヨンは遭難しています。
左脚を負傷し支えなしでは歩けないジヨンは、「俺を置いて下山しろ」と弱音を吐きました。
動揺する浅井に、ジヨンは「さゆりを殺したのは自分だ」と続けます。
死を覚悟したジヨンは、この世に罪を置いていきたかったのでしょう。
死んでもなお罪から逃げたかったのかも。
ところが、罪の告白を終え肩の荷をおろしたジヨンと、困惑をきわめる浅井をよそに、雪が弱まり視界が開けてきたのです。
承:ツイてない
雪が若干おさまった“おかげ”で“無事”山小屋を発見し、延命に成功した浅井とジヨン。
死んだほうがマシとはこのこと
ジヨンの衝撃告白は宙に浮いたまま、2人は暖をとり食事を作ろうと台所へ向かいます。
台所で玉ねぎを見つけた浅井は、スープを作るため包丁を探しますが見つかりません。
包丁の代わりに、台所に滴る血を発見します。
怪我をしているのはジヨンだけ。浅井が見ていない隙にジヨンが包丁を…?
殺人の告白を聞いた手前、浅井の脳内はみるみる1つの考えで充満していきました。
“ジヨンに殺されるかもしれない”
疑心暗鬼になる浅井の前で、ジヨンは救助隊と電話しています。
「はい、1人です」
電話を切ったジヨンに、浅井は恐るおそる訊ねるのです。
「1人だって言ってなかった?」
ジヨンは「怪我人の数を聞かれたんだ」と説明しましたが、浅井は恐怖に取り憑かれていきます。
なぜならジヨンは時折、韓国語で「ツイてない」とつぶやいているのです。
転:殺意の暴走
玉ねぎのスープをすすりながら、浅井は覚悟を決めます。
「さゆりは遭難した、それでいいだろう。なにも聞かなかったことにする」
平常心を装った浅井の提案に、ジヨンは首を傾げました。
「なんで平気なんだ、お前さゆりと付き合ってただろう」
ジヨンは、なにもなかったかのように振る舞う浅井にいら立ちを強めます。
「浅井、お前おかしいぞ」
自分がおこなった告白への後悔と、浅井への積年の憎しみが爆発したジヨンは、ついに隠し持っていた包丁を取り出し浅井に襲いかかったのです。
雪に閉ざされた地獄の密室でデスorキルの鬼ごっこSTART!ひゃっほい
予想通りの展開ながら、生命の危機に嘔吐しつつも逃げ惑う浅井。
実は、浅井は高山病を発症し視力を失いかけていました。
よく見えない人vsよく歩けない人という構図がとても“山下的”
己の肉体に振り回される2人は、武器を手に攻撃と防御を繰り返しますが、思うようにヒットせず山小屋の中を破壊してまわるばかりです。
殺意をあらわに襲いかかるジヨンと、小動物のように逃げ続ける浅井の“リアルかくれんぼ”は夜通しおこなわれました。
結:生還
一時も気を抜けない状況は、浅井を追い詰めていきます。
あまりの恐怖に、さゆりの亡霊を見るまでに錯乱し始めた浅井は、いよいよジヨンに捕まってしまうのです。
馬乗りになったジヨンに恐れ慄いた浅井は、突如告白をします。
「さゆりを殺したのは俺だ」
死にかけてやっと白状する2人
16年前、ジヨンがさゆりを手にかけたとき、浅井は目撃していました。
さゆりの望まぬ妊娠を機に関係の解消をねがっていた浅井は、ジヨンの凶行に感謝すらしていたのです。
さゆりの絶命を感じ、走り去ったジヨン。
様子をみるため近寄った浅井の前で、さゆりは息を吹き返します。
浅井は、瀕死のさゆりをジヨンに続き襲い、ついに殺したのでした。
…と、浅井は大汗をかいて飛び起きます。
夢?!?!久々に映画で夢オチみた
浅井が目を覚ますと、ジヨンは冷静な様子です。
浅井は深い眠りについていたようで、現実の山小屋は朝を迎えつつありました。
「自主するよ…やっと息ができる」
ジヨンは山小屋での静かな夜に、自主の意を固めていたようでした。
悪夢から覚めホッとした浅井は、浮ついた様子でジヨンと向き合います。
ジヨンは、フワフワとした浅井に疑念をもち、浅井を問い詰め始めました。
「浅井、お前おかしいぞ」
ループフラグ?!一難去ってまた一難な浅井
…朝になり、救助隊が山小屋に到着しました。
山小屋には、ジヨンにまたがり何度も凶器を振り下ろす浅井の姿が。
「告白したお前がわるいんだ」
浅井は、絶命したジヨンを前になお、自分の罪から逃げることを選ぶのでした。
【告白 コンフェッション】ネタバレ解説!結末は映画と原作で違う?
次に、「告白 コンフェッション」のネタバレポイントについて解説します。
今作の原作となった漫画や漫画と映画の違いについても調べてみました!
- 「告白 コンフェッション」原作はかわぐちかいじ×福本伸行のサスペンス
- 「告白 コンフェッション」原作との違い①:登場人物の国籍が違う
- 「告白 コンフェッション」原作との違い②:結末が違う
- 「告白 コンフェッション」映画のラストの意味は
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「告白 コンフェッション」原作はかわぐちかいじ×福本伸行のサスペンス
原作は「カイジ」シリーズでおなじみの福本伸行先生、作画は「空母いぶき」などの作者であるレジェンド・かわぐちかいじ先生による合作漫画です。
連載が1997年、単行本出版が2001年とかなり昔の作品ながら普遍的サスペンス展開がさすが!
作画がかわぐち先生なのに、キャラクターのざわざわ感が福本先生という違和感が、贅沢な読後感へつながる原作。
浅井のモノローグがもはやコント!モンスター通り越して鬼みたいになっていく石倉(映画版ではジヨン)と相まってコメディの仕上がりです
「カイジ」シリーズをはじめとし、ギャンブルにおけるプレイヤーの極限状態を描くことの多い福本先生。
他作品同様に、“緊張しすぎて人間味を隠しきれなくなった”人物造形が本作「告白 コンフェッション」の魅力のひとつです。
俺の勝ち!!!集中線ドーン!!!みたいなモノローグほんとすき
原作漫画は、映画ではあまり描かれなかった“福本節モノローグ”満載でいつも通り楽しめます。
「告白 コンフェッション」原作との違い①:登場人物の国籍が違う
山下監督いわく、ヤン・イクチュンさんのキャスティングありきで企画が立てられたのだそう。
おなじく山下監督が浅井役にと切望した生田斗真さん、ご両人の年齢に合わせて、時代設定も原作から変更されました。
5年前に企画はスタートしていたけど、コロナで延期されていたんだって。無事実現してくれて感謝です
原作の石倉は熱血漢というか、身体のがっしりした「男っぽい」人物なのですが、ヤンさんは立派な肉体と引き換えに可愛らしさも備えたルックスが魅力のひとつ。
石倉の恐ろしさが、ドバドバと吐き出される直接的な感情と暴力にあるとすれば、ジヨンの恐ろしさは内にこもっていく繊細さにありました。
意図的に使われる韓国語の意味はわからないのに、なぜかFワードだけ聞き取れるから超怖い
母国語のちがう相手とのコミュニケーション間にあるわずかな距離+“急激に信頼関係が破綻する”という不安の相乗効果が見事でした。
韓国人男性・ジヨンの見るからに強そうな体型も圧倒的強者すぎてひょろひょろ浅井がチンケに見える…生田斗真なのに不思議
「告白 コンフェッション」原作との違い②:結末が違う?
結末はほぼ同じです!
ラストシーンも厳密にはちがいますが、浅井の選択は原作と変わりません。
結末というより、終盤までの流れがちがいました。
原作では、すべての事象が目の前の現実として描かれていましたが、映画では2人による“殺人追いかけっこ”そのものが浅井の悪夢として描かれています。
悪夢から覚めてもまだ悪夢の中…という悪夢あるあるもゲボくてすきでした
ジヨンの告白によって自分の罪が刺激され、自滅していく浅井の精神世界は、さゆりの亡霊も登場し一気に狂っていきます。
原作は殺意むき出しで襲いかかってくる石倉が、むき出しすぎて段々おもしろくなってくるんですが、映画では現実に近いリアリティラインを重んじていた気がしました。
とんでもない殺し合いが、実は夢だった…という設定が逆にリアルだからこそ、悲劇のラストシーンに震えます。
「告白 コンフェッション」映画のラストの意味は
映画では、浅井が「告白したお前がわるいんだ」とジヨンの死体に語りかけていました。
原作では、「聞いてしまったあいつが….悪いのだ….!!」となっております。
他責に終始する点では共通していますが、「告白する」という、他人の“あくまで自発的な行動”を非難することで浅井のサイコ感が増していました。
ラストシーンの2人の位置関係も、原作とはちがうから距離感もちがうんだけど、生田斗真のサイコ好きだから至近距離ありがとうだよ(ちがう)
長年の重荷に耐えきれず「告白」したジヨンとは決定的にちがう、浅井の余裕にこそ恐怖の種を見ました。
サイコ浅井の人格形成をさかのぼって見てみたいです。あなたはサイコなの?ソシオなの?
タイトル回帰としての台詞変更と考えても、美しいです。
【告白 コンフェッション】映画のキャスト・登場人物を解説!
続いて、「告白 コンフェッション」に登場する登場人物とキャストについて解説します。
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浅井啓介役/生田斗真
軽妙なキャラクターが信用ならない、部活やサークルに1人はいそうな“地雷系イケメン”浅井。
浅井を演じたのは、本作で歌手デビューも果たした生田斗真さんです。
原作の浅井に近づけるというよりも、生田さんのタレントイメージを利用したという山下監督。
しかしスクリーンに現れた浅井は、ヤンマガでモノローグにおぼれていた浅井そのものと感じました。
形から入るのではない、生田さんや現場の柔軟さが結果として原作の雰囲気と合致したのでしょう
瀬々敬久監督「友罪」(2017)や高橋正弥監督「渇水」(2023)など、シリアスな作品にも多く出演する生田さん。
本作では、絶妙に軽快さを感じさせるフロントマン芝居(造語)を織り交ぜながら、良いバランスでシリアスとコメディを渡り歩いているように感じました。
こういう底の読めないイケメンっているよなぁ…嫌だなぁ…と思って観ていました
リュウ・ジヨン役/ヤン・イクチュン
「息もできない」という、圧倒的才能で2010年に映画オタクたちを爆発させた映画があるのですが、それを監督・脚本・主演・編集・製作したのがヤン・イクチュンというスーパーマンです。
本作の中でも「息ができる…」とあえてジヨンに言わせていた気がしますね。
「ヤン・イクチュンがすき」と言っておけばセンスがある人だと思われる時期がありました。
近年では岸善幸監督「あゝ、荒野」(2017)など日本で作られた映画にも出演するなどフレキシブルに活動しています。
本作「告白 コンフェッション」では、大きな身体で縦横無尽に這い回り、振り切ったモンスターとして暴れまわっていたヤンさん。
個人的に回想シーンのニット帽姿がキュートで、自然光に照らされたヤン・イクチュンもいいなぁと思った次第です。
西田さゆり/奈緒
一切の声を奪われ、浅井とジヨンそれぞれの脳内でのみ再生される“過去”として存在していたさゆり。
演じたのは、中田秀夫監督「事故物件 恐い間取り」(2020)にて“怯え芝居うますぎるニューカマー”として突如Jホラー界の希望の光となった奈緒さんです。
白目を剥いて恐れ慄くお顔の完璧な形式美に、ホラーファンは心満たされました
本作でも、見られます…!!!!!
奈緒さんが芝居うますぎることなど、ここで語るまでもない常識ですので、奈緒さんが怯える姿をスクリーンで見るためにいますぐ映画館へ走ってください。
【告白 コンフェッション】映画で印象に残ったシーン・場面3選(ネタバレあり)
「告白 コンフェッション」で私が印象に残ったポイントは、以下の3つです!
ぜひ、映画を見る際に注目していただければ嬉しいです。
①体格差からくる恐怖
会話劇でありながら、ワンシチュエーションで提示される視覚的な情報をキャッチすることも観客の重要な任務であった本作。
兵役のある韓国出身の男性に感じる、理屈ではなく実体をともなった“生物としての強さ”が画面を支配していました。
昔バイト先にいた韓国人男性の、腿のような腕を見ながら「ワンパンくらったらヤバそう」と妄想していたことを思い出しました
対する浅井役の生田さんも、鍛え上げられた肉体でありながら、ジヨンとの絶対的な質量の差が効果的です。
たまに浅井が女の子に見える瞬間すらあった!
視界を奪われながら、文字通り必死に逃げ惑う浅井に己を重ねては恐怖にきらめきました。
②俳優のスタンス
芝居のトーンが作品としてバッチリでした!
シリアスすぎず、かといって抜きすぎず、エンターテインメントとして見やすい芝居のバランス感覚。
観客の「欲しい」に忠実に、ときにいじわるに外す余裕と、実力に裏打ちされた開放感。
チームとして、とても良い雰囲気で撮影が進んでいたんだろうなぁという、プラスの空気が作品にしっかり映っていました。
サスペンスだってホラーだって、現場が楽しいのがいちばん!プロフェッショナルの集合体・山下組に感謝です
個人的ベストは、浅井の「風邪引いちゃったかなァ」と、それをスカすジヨンのカットです。
③山下作品としての斬新さ
インタビューで、本作をホラーなど特定のジャンルをさす“ジャンル映画”と捉えていると語っていた山下監督。
元々ホラー映画に造詣の深い山下監督だからこそ、監督自身の心中にうずまく「ワクワク」が映画全体に伝播しているように感じました。
山下作品は、緻密に練られた構図とは対照的に自由度の高い会話劇が特徴のひとつ。山下作品の中で生まれる“間(マ)”が大好きなのだけど、遠く画面を固定してマを愉しむ作品群とは明らかにちがう本作が新鮮!
反対に、画面の奥でなにかが起こるさまが間抜けだったり、意思に反して肉体運動が間抜けだったり、という身体的な部分にはいつもの山下節を感じました。
ホラー好きな山下さんが作るホラー、どんどん観てみたいです!
【告白 コンフェッション】映画を実際に鑑賞した感想と評価(ネタバレあり)
ストーリー展開
演劇に変換しても成り立つほどのシンプルな会話劇からの、山小屋が倒れそうなほどのアクロバティック劇はわかりやすく楽しめました。
ストーリーも、終盤にかけての展開以外はほとんど原作に忠実で、原作を読んでいれば美術の細かな作り込みによる再現にも感動します。
浅井のサイコ思考だけは意味不明だけどね
結末
「夢オチらしい」というふんわりな情報とともに劇場へ行ったので、まさかの原作リスペクトなオチに驚きました。
とはいえ、山下さんが選択した夢オチならば、絶対に最高なんだろうという未知のワクワクを抱えていたのも事実。
ほんと映画で夢オチ見たの久しぶりすぎてうけた
浅井という人間の、根深い空虚に触れられる映画的なオチに大満足です!
上映時間
体内時計で90分間を計ることのできる特殊技能をもった筆者、90分以内の映画を好んで観る傾向にあります。
74分という上映時間は素直にうれしかったです。
以前友だちが「おなじ2,000円なら長ければ長いほどお得感があって良い」と言っていたんですが、価値観ってそれぞれだなとしみじみ思いました
もし尺が増えるなら、原作にもない浅井とジヨン、そしてさゆりの学生時代を見てみたいです!
再鑑賞
筆者とおなじホラーマニアの友人と、ヤン・イクチュンパーティーを開く日が楽しみです!ライトな作風で何度も観られます。
【告白 コンフェッション】ネタバレ&映画の結末までのあらすじ:まとめ
息つく間もなく雪山で逃げ惑った74分、山小屋内をぐるっと周る丁寧な“バトルフィールド紹介カット”から始まったジャンル映画としての在り方と、ムキムキな2人の闘いに魅せられました。
エンドロールで流れるマキシマム ザ ホルモンと共犯した生田斗真の旋律までがコンフェッション!ぜひ劇場で体感してください!